魚の与え方

猫のフランケン生食で、オメガ3脂肪酸補給のために魚を与える方法について。

与える魚の形態

  • フランケン生食では魚のオメガ3脂肪酸を食事に取り入れるため、ネコに魚や魚油サプリを適量与えることが推奨されています。
  • 与える魚の形態は、生魚(1匹丸ごと)・刺身・缶詰と大きく3つに分かれます。どの形態にも良い点や悪い点があります。
  • フランケン生食を実践中の多くの人が、生魚・刺身・缶詰のいずれか1つを選んで魚を与えています。食事の多様化のために、2つ以上の形態を併用してもOKです。(例えば刺身と缶詰をそれぞれ隔週で与えても大丈夫です。)
  • フランケン生食でネコに与える魚は少量にとどめるのが原則です。魚は主食ではなくおやつやサプリメントに近いので、生魚・刺身・缶詰のいずれを使うとしても、肉(食事の80%)や骨(食事の10%)の摂取量として加算する必要はありません。

生魚の与え方

与える量

  • フランケン生食では、一週間に一度だけ小さめの種類の魚を与えるのが一般的です。一週間に一度、ネコの食事をイワシなどと置き換えます。
  • 与える魚の大きさは、飼い主さんごとに結構異なるようです。大きめのイワシを与える飼い主さんもいますが、それだけの量の生魚を与えることに不安を感じる人もいます。
  • 魚を1匹丸ごと与える場合、魚のサイズが大きいほどオメガ3脂肪酸の摂取量も増えます。しかし魚を大量に摂取することはネコの健康に悪いです。そのため、ネコの健康に悪影響を与えない程度の大きさで、なるべく大きい魚を与えるのが無難です。
  • UMHSによると、イワシのオメガ3脂肪酸含有量はサケと比べて87.5%と推定されます(脚注1)。生のサケは100gあたりオメガ3脂肪酸を740mgだけ含むので(脚注2)、イワシのオメガ3脂肪酸含有量は100gあたり約648mgとなります。オメガ3脂肪酸を1週間あたり900mg(魚油3000mgと同等)だけ摂取するには、1週間あたり約139g、1日あたり20gだけ生イワシを食べる必要があります。
  • オメガ3脂肪酸の量は魚の大きさ・種類・生活環境などで変わるため、上記の含有量はあくまで目安です。イワシは缶詰の形で利用されることが多く、生イワシの栄養成分データが見つからなかったため、オメガ3脂肪酸の含有量は生サケの栄養成分から推定しています。
  • フランケン生食で必要な食事量は、標準体型のネコなら体重の2~3%です。5kgのネコなら100~150gが1日の食事量となります。このうち20gをイワシに置き換えるのは多すぎると考える人も多いです。
  • 魚を習慣的に食べることはネコの健康に良くない上、魚を主食として食べ続けると黄色脂肪症や尿路疾患などの病気の危険があります。このためオメガ3脂肪酸の摂取量を減らしてでも魚の量を減らしたり、魚油サプリメントを取り入れつつ魚の量を減らす人も多いです。
  • 生魚は缶詰や魚油サプリのように濃縮されていないため、オメガ3脂肪酸の摂取という意味では最も効率が悪いです。オメガ3脂肪酸の摂取効率を上げるため、オメガ3含有量の高い魚を与えることが必要です。魚の種類については魚の選び方に掲載しています。

寄生虫の危険

  • ネコに生魚を丸ごと与えても大丈夫という意見もある一方で、生魚には肉とは異なる寄生虫の危険があります。人間が生で食べると想定されていない生魚には、魚由来の寄生虫が棲んでいることがあります。
  • 新鮮な魚には、内臓や肉に寄生虫が潜んでいることが結構あります(大きな寄生虫がいると動いているのが見えたりします)。寄生虫は主に魚の内臓にいますが、肉の方に移動してくることもあるため注意です。
  • ネコに生魚を丸ごと与えるとき、魚の内臓を取り除く人も多いです。内臓を取り除くことで大部分の寄生虫を除くと同時に、釣り針などの異物が入っていたときに一緒に取り除けます。
  • 生魚の内臓を除いたとしても、寄生虫が肉の方に移動していた場合は取り除けません。そのため新鮮な生魚を丸ごと与える場合、魚の肉にいた寄生虫をネコが食べてしまう危険があります。

骨の危険

  • 魚の種類や大きさによっては、細く尖った骨を持つことがあります。尖った骨は、手羽先などの肉に入っている骨よりも危険度が高いです。
  • ネコに生魚を与える多くの人の意見は、小さな魚の骨なら大丈夫ということが多いです。しかし具体的にどのくらいのサイズなら小さな魚に分類されるのか、どのサイズの魚なら安全に食べられるかは、ネコや飼い主さんごとに異なってしまいます。
  • 魚を丸ごと食べるときの安全度は、ネコさんの慣れ具合や性格にもよります。大きめの魚を上手に食べるネコさんもいれば、歯に骨が挟まったり、喉に骨が詰まるなどの事故を起こしたネコさんもいるようです。
  • 生魚を丸ごと与える場合でも、鋭い魚のヒレなどは安全のため取り除く人も多いです。
  • 生魚をまるごとすり身にしたものがペットの生食用として販売されていることがあります。人間も加熱すれば食べられる基準の製品は安全性が高いです。すり身を与えれば生魚の骨の心配はありません。
  • 寄生虫退治のために魚を加熱してからあげる場合、加熱した骨はもろくなり危険なため取り除き、魚肉のみを与えます。蒸す・蒸し煮・さっと焼くなどの調理法は、炒める・揚げるなどの調理法よりもオメガ3脂肪酸の減少量が少ないといわれます。
  • 魚由来の寄生虫や尖った骨の危険を考慮して、うちでは念のため生魚丸ごと1匹をネコに与えたことはありません。すり身を与えたことはあります。

刺身の与え方

与える量

  • 刺身を与える場合でも、一週間に一度だけ、食事を適量の刺身に置き換えます。
  • 刺身も生魚の一種なので、缶詰や魚油サプリのようにオメガ3脂肪酸が濃縮されていません。オメガ3脂肪酸を適量摂取するためには、それなりの量の刺身を食べる必要があります。
  • 例えば生のサケは100gあたり740mgのオメガ3脂肪酸を含みます(脚注2)。1週間あたりオメガ3脂肪酸を900mg(魚油3000mgと同等)摂取する場合、生のサケなら1週間あたり122g、1日あたり17gだけ食べる必要があります。
  • フランケン生食の食事量は、標準体型のネコで体重の2~3%です。体重5kgのネコなら100~150gが1日に食べる量となります。このうち17gを習慣的に魚と置き換えると、魚の量が多すぎると判断する人も多いです。
  • 魚を習慣的に食べることはネコの健康に良くないだけでなく、魚を主食としてしまうと黄色脂肪症や尿路疾患など病気の危険もあります。このためオメガ3脂肪酸の摂取量を減らしてでも魚の量を減らしたり、魚油サプリメントを取り入れながら魚の量を減らす人も多いです。

各種危険

  • 生魚丸ごと1匹とは異なり、刺身は骨が除かれているため尖った骨の危険がありません。また人間が生食することが想定されているため、大抵の刺身は冷凍処理により寄生虫が死滅していて安全です。
  • スーパーなどで販売されているお刺身には、保存料・調味料・植物油脂などが添加されていることがあります。なるべく添加物の少ないお刺身を選んだ方が無難です。
  • 寿司に乗っている刺身にはワサビや寿司飯がくっついていることがあるので、なるべく使わない方が安全です。また市販のお寿司に乗っている刺身には保存料などが添加されていることもあります。
  • イヌが生のサケなどを食べると、鮭中毒を起こす危険があります。イヌがいる家庭の場合、生のサケやその他遡河魚(産卵時に海から川へ上る習性がある魚)は避けた方が安全です。ネコが鮭中毒を起こすことはありません(脚注3)。

缶詰の与え方

与える量

  • 魚缶詰の与え方は、一週間に一度だけ食事1回分を魚缶詰と置き換えるのが一般的です。ここで魚缶詰を与える量は飼い主さんごとに異なります。1匹あたりに小さな缶を1缶与える人もいれば、その缶を複数のネコで分け合う家庭もあるようです。
  • 獣医師Karen Shaw Beckerのレシピでは、1日2回食事を与える場合、一週間に4回だけ食事の1/4をイワシやサケの缶詰と置き換えることが推奨されています(脚注4)。この給与量は1週間に一度だけ食事を魚と置き換えることと同等ですが、与える日を分散させることで効率的な栄養素の活用に期待できます。
  • 例えば缶詰のイワシの場合、100gあたり約1480mgのオメガ3脂肪酸を含みます(脚注5)。1週間あたりオメガ3脂肪酸900mg(魚油3000mgと同等)を摂取するには、1週間あたり61g、1日あたり9gの缶詰イワシを与える必要があります。
  • 缶詰の魚は生魚と比べて成分が濃縮されているので、上記のイワシの摂取量は多すぎると判断する人も中にはいます。オメガ3脂肪酸の摂取量を減らしてでも魚の量を減らす人もいれば、魚の量を抑えつつ魚油サプリを取り入れる人もいます。

各種危険

  • 魚の缶詰では製造時に加熱殺菌されるため、寄生虫の心配はありません。また大抵の缶詰では、骨まで柔らかくして食べられる処理がされています。
  • 魚の缶詰の多くは、植物油で保存されていたり、塩などの調味料が添加されているデメリットがあります。
  • 缶詰の魚が植物油で保存されていると、植物油からオメガ6脂肪酸を摂取してしまい、オメガ3脂肪酸の割合を高める効率が悪くなってしまいます。なるべく植物油でなく、水で保存されている缶詰を選びます。
  • 色々な調味料を使い、濃い味つけにした缶詰はネコの健康に良くないため避けます。塩だけが添加された缶詰も、できれば避けた方が安全です。
  • 市販の魚缶詰の多くには塩が添加されています。どうしても塩が添加されたものしか手に入らない場合、お刺身や魚油サプリなどと併用し、缶詰はごくたまに与える程度にとどめた方が無難です。
  • 魚の缶詰は生魚と比べて匂いが強いことが多いです。魚の強い匂いに慣れると、ネコさんによっては生肉など他の食材を拒否するようになることがあります。この場合、缶詰は他の食材などと混ぜて薄めて出すか、缶詰の使用は控えるしかありません。

猫缶の利用

  • オメガ3脂肪酸の補給に、魚が主原料のウェットフードを利用することも考えられます。その場合に問題となるのが、オメガ3脂肪酸の含有量が記載されている缶詰が少ないことです。
  • オメガ3脂肪酸含有量が明記されていないと、そのフードで補給できるオメガ3脂肪酸の量が分かりません。ウェットフードの原材料となる魚の種類や、原材料中の魚の割合が不明な場合、期待できるオメガ3脂肪酸の量はさらに分かりません。
  • 魚が主原料の猫缶の中には、魚肉よりも魚の骨や内臓が多く含まれている製品もあります。これは人間の可食部以外を猫缶の主原料にしたためです。このような猫缶はリンが高すぎたり、重金属汚染などの危険があります。そのため長期的に利用することはネコの健康に良くありません。

脚注

  1. The University of Michigan Health System
  2. Nutrition Facts and Analysis for Fish, salmon, chum, raw
  3. Salmon Poisoning Disease
  4. Taylor, B, & Becker, KS 2013, Dr. Becker's Real Food for Healthy Dogs and Cats: Simple Homemade Food, 4th edn, naturalpetproductions.com (書籍)
  5. Nutrition Facts and Analysis for Fish, sardine, Atlantic, canned in oil, drained solids with bone

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