手作り食の栄養バランスとAAFCO栄養基準

手作り食の栄養バランスはAAFCO総合栄養食の基準を満たす必要があるのかについて。

AAFCO栄養基準と総合栄養食

  • 市販のキャットフードの袋や缶に「AAFCO総合栄養食の基準を満たす」と書かれていることがありますよね。AAFCO栄養基準では、キャットフードが含むべきたんぱく質や脂質の量や、ビタミン・ミネラルなどの微量栄養素の量が定められています。
  • キャットフードに含まれる栄養素がAAFCO栄養基準を満たすとき、そのフードは「総合栄養食」と表示ができます。AAFCO栄養基準ではネコに必要な栄養素の量が大まかに定められています。そのため総合栄養食のキャットフードを与えている場合、そのフードだけを与え続けても、ネコが栄養素の欠乏により病気になることは考えにくいです。

手作り食はAAFCO栄養基準を満たす必要がある?

  • インターネット上やペットの手作り食の本では、色々な手作り食のレシピが公開されています。これらのレシピは、ほとんどがAAFCO栄養基準を満たしていません。言い換えれば、これらのレシピに沿って作った食事を販売する場合、「総合栄養食」の表示ができません。
  • では、AAFCO栄養基準を満たしていない手作り食をネコに与え続けた場合、ネコは栄養素の欠乏で病気になってしまうのでしょうか?答えは「レシピによっては病気にならないし、レシピによっては病気になる恐れがある」です。
  • AAFCO栄養基準は市販のキャットフード向けに定められています。市販のキャットフードのほとんどはドライフードや缶詰などの形で高度に加工されています。高度に加工された食事は、新鮮な材料を使った手作り生食や、軽く調理しただけの手作り食と比べてネコの消化に悪いです。
  • 手作り食は市販のキャットフードと比べてとても消化しやすく、栄養素の吸収効率も良いといえます。そのため栄養素によっては、消化に悪い食事をとることを前提としたAAFCO栄養基準を満たしていなくても問題ないことがあります。AAFCO栄養基準を満たしていない生食レシピをずっと与え続けても、ネコさん達が元気に過ごしている例も多くあります。
  • 市販のキャットフードは、多くがドライフードや缶詰の形で販売されてきました。そのため生食など、ネコの消化に良い食材を使うことを前提とした総合栄養食の基準についてはまだまだ研究が必要です。

AAFCO栄養基準を満たさない手作り食の例

  • AAFCO栄養基準を満たさないミンチ生食のレシピの例としては、獣医師Lisa A. Piersonのレシピが挙げられます(脚注1)。獣医師Lisa A. Piersonはこのレシピを2003年から与え続けていて、多くの人にレシピが利用されています。このことを考慮すると、獣医師Lisa A. PiersonのレシピはAAFCO栄養基準は満たさず「総合栄養食」の表示はできないものの、レシピを利用し続けてもネコが栄養素の不足で病気になることは考えにくいといえます。
  • 逆に、インターネット上や手作り食の本で見つかるレシピの中には、与え続けると危険と思われる食事も結構あります。代表的な例は、食事内容が骨入り肉だけだったり、お肉に野菜を混ぜただけというものです。
  • ネコは野生の獲物からとれる栄養をまるごと必要としているので、骨入り肉だけやお肉+野菜だけでは必要な栄養バランスを再現できません。栄養バランスが大きく狂ったレシピを数ヶ月、数年と続けていくと、ネコさんが病気になったり、最悪ネコさんが命の危険にさらされてしまいます。

栄養バランスが不安なときは?

  • 上記のように、手作り食のレシピがAAFCO栄養基準を満たしていないからといって、そのレシピの栄養バランスが悪いとは限りません。しかしレシピがAAFCO栄養基準を満たしているなら、それに越したことはありません。
  • AAFCO栄養基準を満たしていない手作り食のレシピには、長期的に与え続けることでネコさんの健康を害する恐れのあるものも残念ながら多くあります。
  • どの手作り食のレシピを選んでいいか分からない場合は、
    「そのレシピが多くのネコに長期間与え続けられていること」
    or
    「そのレシピがAAFCO総合栄養食などの栄養基準を満たすこと」
    これらの少なくとも一方を満たすレシピを選べば安全性が高まります。
  • 多くのネコが長期間食べ続けても健康問題が起こらない食事は一番安全です。そうでない場合でも、レシピがAAFCOなどの栄養基準を満たすことで、少なくとも栄養素の欠乏でネコが病気になる事故を予防できます。
  • 獣医師Lisa A. Piersonのレシピと海外サイト「Cat Nutrition」で公開されているレシピ(脚注2)はほぼ同じです。これらのレシピは多くの人が長期間ネコに与え続けている人気レシピで、生食に理解のある獣医師に推奨されることもあります。よってインターネット上で見つかるレシピの中では、信頼度が高いミンチ生食といえます。
  • 書籍では、Beth Taylor & 獣医師Karen Shaw Becker 共著のDr. Becker's Real Food for Healthy Dogs and Cats: Simple Homemade Foodなどがあります。この本に従って食事を準備することで、比較的入手しやすい原材料を使って栄養バランスの良い食事を与えることができます(脚注3)。この本では栄養バランスの基準として、AAFCOやNRCの栄養基準が使われています。

脚注

  1. Making Cat Food by Lisa A. Pierson, DVM :: homemade cat food, cat food recipes
  2. Recipes - Cat Nutrition
  3. Taylor, B, & Becker, KS 2013, Dr. Becker's Real Food for Healthy Dogs and Cats: Simple Homemade Food, 4th edn, naturalpetproductions.com (書籍)

スポンサードリンク

PR

PR