卵の選び方

猫のフランケン生食で、栄養補給のために与える卵の選び方。

卵の質は何で決まる?

  • フランケン生食の主食はお肉+骨+内臓ですが、主食に不足しがちな栄養素を補うために卵が使われています。
  • ネコに与える卵はスーパーで購入したものでもOKですが、食材の質にこだわる飼い主さんもいます。卵の質は、主に採卵鶏が食べる飼料と、鶏舎の環境で決まります。
  • 採卵鶏に与えられる飼料により、卵が含む栄養や、卵の味が大まかに決まります。
  • 鶏の生活環境によっても卵の質が改善できますが、その影響は飼料ほど大きなものではありません。しかし鶏舎の環境は雌鶏の精神的な健康に関わるため、倫理的な問題でもあります。
  • 卵の質は、採卵後の保管・運搬方法などによっても変わってしまいます。中には採卵したての卵を、卸売市場や小売店を通さずに直送してくれる業者もいます。このようなサービスを利用すれば、とれたての新鮮な卵が入手できます。

卵の質について(飼料)

飼料の原材料

  • 畜産副産物など、低品質の原材料を含む飼料を与えない養鶏場もあります。
  • 飼料の配合を工夫したり、こだわりの原材料を使っている養鶏農家もあります。パプリカ、にんにく、カキ殻、海草、オリゴ糖、発酵飼料など、こだわりの原料を飼料に加えることで卵の質が高まるとされています。
  • 採卵鶏に与える飼料を工夫することで、卵に含まれるビタミンE・カルシウム・鉄・その他ミネラルなどの栄養素が増えることがあります。
  • 雌鶏の飼料に木酢を加えることで、卵特有の臭みが抑えられるといわれています。一方で木酢は卵の旨みも抑えてしまうことが懸念されたり、その強い殺菌力が生体などに及ぼす害を不安視する声もあります。

飲み水

  • 養鶏場によっては、地下水や清流の水を使うなど、鶏の飲み水にこだわる場合もあるようです。
  • アルカリイオン水や活性水が使われることもありますが、これらの水が卵の質に及ぼす影響についての研究はほぼありません。

化学物質

  • 国や地域によっては、採卵鶏に抗生物質やホルモンが与えられている危険があります。輸入卵を使うときは注意です。
  • 日本では、産卵期の鶏に抗生物質を与えることは禁止されています。

卵の質について(環境)

空間

  • 多くの採卵鶏は、狭い檻にすし詰めにされて生活しています。狭い檻では動き回ることができず、運動できません。檻はとても不潔なこともあります。
  • 養鶏場によっては、鶏舎内を鶏が自由に歩き回れるようになっています。鶏舎の建物は狭いことも広いこともあります。
  • 鶏舎の外に屋根つきの空間があり、そこに鶏が出て外の空気を吸えるようになっていることもあります。
  • かなり少数派ですが、鶏が広い庭を自由に歩き回れる養鶏場もあります。鶏は虫や葉っぱを食べたり、外で遊んでのびのび生活しています。

照明

  • 採卵鶏の多くは、ほとんど明かりのない、暗い鶏舎内で一生を終えます。鶏が日光を浴びることはありません。
  • 大きな窓や天窓を取り入れ、昼間は鶏舎内に日差しが入るようにした養鶏場もあります。

強制換羽

  • 鶏の生活の質向上のため、強制換羽を取り入れない養鶏場もあります。このような養鶏場では、鶏が自然に換羽するのを待ち、無理に換羽させることがありません。
  • 本来、雌鶏は冬が来ると換羽します。換羽とは体の羽が新しいものと抜け替わることです。換羽期間中、雌鶏は卵をあまり産まなくなります。
  • 換羽期に卵を産まないからといって、採卵鶏を換羽させずに卵を産ませ続けると、卵の生産率や質が落ちてしまいます。
  • これを避けるために、養鶏場では全ての雌鶏を同時に、強制的に換羽させます。鶏は飢餓状態になると換羽するので、強制換羽は通常、鶏を完全に絶食させるか、栄養価の低い餌を与えることで行われます。
  • 鶏に餌を与えない期間は1~2週間程度です。この間に餓死してしまう鶏もいます。
  • 強制換羽を避けている養鶏場でも、自然換羽に任せているとは限りません。強制換羽しない代わりに、換羽が必要となった鶏をと殺に回している養鶏場もあります。

生活の質

  • 採卵鶏の生活の質は、養鶏場によって大きく異なっているのが現状です。これは卵の質だけでなく、鶏の幸せに関わる問題です。
  • 効率のみを重視した養鶏場では、雌鶏が暗い建物内で過密に生活しています。狭い檻では動くこともままならず、食べて卵を産むことだけが活動の全てです。鶏は檻に閉じ込められているので、他の雌鶏や人間などとの関わりも薄いです。
  • 一方で生活環境の良い養鶏場では、鶏が鶏舎から外に出て自由に歩き回ることができます。散歩中に虫や葉っぱを食べたり、他の雌鶏や人間との交流も行われます。

有機卵・オーガニック卵

有機卵とは

  • 「有機」や「オーガニック」と表示された卵は、特定の規格を守っています。「有機」「オーガニック」の表示をするための基準は、国や法律ごとに異なります。
  • 「有機」と「オーガニック」の意味は同じです。有機卵とオーガニック卵は同じ基準を守っている卵で、言い方を変えただけです。
  • 日本の農産物や加工食品に「有機」「オーガニック」と表示されているなら、その商品は有機JAS規格を守っています。
  • 以下は有機卵・オーガニック卵が守っている基準の例です。

日本(JAS協会)

  • 有機飼料のJAS規格に適合している飼料を与えます。
  • 他に治療法がない場合を除き、抗生物質やホルモン剤を飼料に混合することは禁止されています。
  • 採卵鶏を狭いケージに隔離して飼うことは認められません。
  • 太陽光や換気の条件を考慮して、窓のない鶏舎は認められません。
  • 鶏を週2回以上は野外の運動場に放牧することが必要です。
  • 飼料を制限したり、絶食などによる強制換羽は認められません。

アメリカ(USDA)

  • 有機飼料の規格に適合している飼料を与えます。規格はUSDA(農務省)や州などが定めています。
  • USDA規格では、遺伝子組み換え飼料の使用が禁止されています。また飼料は一般的な農薬や化学肥料を含んではいけません。
  • 採卵鶏はケージに隔離などの飼い方ではなく、鶏舎内を自由に動き回れることが必要です。
  • 鶏は野外に出られることが必要です。

放し飼い卵

放し飼いとは

  • 放し飼い(Free Range)とは、採卵鶏を野外の運動場に放牧する飼い方のことです。
  • 放牧時間や頻度の目安は国や地域で異なります。一般的に週数回、昼間だけ放牧すれば放し飼いとして認められることもあれば、昼間はいつでも鶏が屋外に出られる設備が必要なこともあります。
  • USDA Free Range規格のように、放し飼い卵と表示するにあたり、鶏が実際に外に出る必要がないことがある点には注意です。USDA規格では、放し飼い卵の採卵鶏は鶏舎から野外に出られるようになっている必要があります。しかし鶏が自分の選択で野外に出ていかず、鶏舎内だけで生活している場合でも放し飼い卵の表示ができます。

平飼いとは

  • 放し飼いと混同されやすい飼い方で、平飼いというものがあります。平飼いされている採卵鶏はケージに閉じ込められることはなく、鶏舎内で自由に運動できます。
  • 平飼いでは、放し飼いと異なり、鶏が野外で自由に歩き回る必要はありません。
  • 現状では、平飼いの卵でも放し飼い卵として販売されていることがあります。また基本的に平飼いをしていても、野外の運動場で鶏を遊ばせることがある養鶏場もありややこしいです。

普通の卵との違い

  • 鶏が放し飼いされていると、屋外で運動する間に虫や植物を食べることがあります。このような採卵鶏から生まれた卵は、黄身のオレンジ色が濃いことがあります。
  • 放し飼い卵が通常の卵よりも栄養面で優れるという科学的証拠は乏しいとされています。
  • 一方で、放し飼い卵は栄養面に優れると主張する研究結果も一応あります(脚注1)。この研究結果では、放し飼い卵はコレステロールや飽和脂肪が低く、オメガ3脂肪酸・ビタミンA・ビタミンE・ベータカロテンが高いことがあるとしています。
  • 放し飼い卵と普通の卵の栄養価の違いについては分からないことも多く、更なる研究が必要です。

有精卵

有精卵とは

  • 雌鶏が卵を産む前に雄鶏と交尾していると、生まれた卵は有精卵となります。有精卵が雌鶏から生まれた後、適切に管理していると卵からヒヨコが生まれます。
  • 一方で、市場に出回るほとんどの卵は無精卵です。雌鶏が卵を産む前に雄鶏と交尾していないと、その卵は無精卵となります。無精卵からヒヨコが生まれることはありません。
  • 雌鶏と雄鶏を共存させることで、なるべく自然に近い状態で採卵鶏を飼った結果、有精卵を生産している養鶏場もあります。

有精卵と無精卵の違い

  • 有精卵は命を持つ卵ということで、栄養面などで優れていると思われがちです。しかし、有精卵が無精卵よりも栄養的に優れているという科学的証拠はありません。
  • 有精卵と無精卵の味の違いはないとされます。

栄養強化卵

栄養強化卵とは

  • 卵には色々な栄養素が含まれていますが、雌鶏に与える飼料を工夫することで、卵が特定の栄養素を多く含むようにできます。
  • そこでオメガ3脂肪酸、鉄、ヨウ素、各種ビタミンなど、現代人に不足しがちな栄養素を多く含んだ卵が生産されるようになりました。これが栄養強化卵です。

栄養強化卵は人間の役に立つ?

  • 忙しい生活の中で、栄養バランスの良い食事を準備できない人は多いといわれます。このようなとき栄養強化卵を摂取することで、不足した栄養素を手軽に補い、栄養バランスの崩れを軽減できます。
  • 栄養強化卵に全ての必須栄養素がバランス良く含まれるわけではないので注意です。栄養強化卵は、不足しがちないくつかの必須栄養素を多く含んでいることが多いです。
  • 色々な食材を使って栄養バランスの良い食事を準備できるお家の場合、栄養強化卵は特に必要ありません。
  • 中には、特定の栄養素を他の食品ではなく、卵から摂取する方が健康に良いとの主張も見られます。このような主張は科学的根拠がないことがあるので、卵を買う前に実験や統計といったデータの根拠があるか調べるか、気になる方は生産者に問い合わせてみた方がいいと思います。

オメガ3脂肪酸

  • オメガ3脂肪酸が強化された卵の多くは、採卵鶏の飼料に亜麻仁などを加えることで生産されています。
  • 亜麻仁はALAという植物由来のオメガ3脂肪酸を含み、EPAやDHAといった動物由来のオメガ3脂肪酸は含まないことに注意です。よって多くのオメガ3脂肪酸強化卵は、EPAやDHAを摂取したときのような健康増進効果に期待できません。
  • CSPI(公益科学センター)によると、調査対象となったオメガ3脂肪酸強化卵では、EPAとDHAの含有量はオメガ3脂肪酸全体の半分以下だったとのことです(脚注2)。CSPIの栄養士はオメガ3脂肪酸を強化食品からではなく、脂肪の多い魚から摂取することを推奨しています。一般的なオメガ3脂肪酸強化食品のEPA+DHA含有量は、オメガ3脂肪酸の高い魚と比べて無視できる程度です。
  • 一方で採卵鶏に魚油を与えることで、ALAではなくDHAを含むようにした強化卵もあります。サケはオメガ3脂肪酸の多い魚ですが、DHA含有量がサケの半分以上となる強化卵もあります。

ヨウ素

  • ヨウ素が強化された卵は、採卵鶏の飼料に海藻などを加えることで生産されます。ヨード卵が有名です。
  • ヨウ素が強化された卵は、ネコにとってはヨウ素が高すぎます。そのためヨウ素強化卵を日ごろからネコに与えるのは勧められません。
  • ヨウ素はネコの甲状腺機能亢進症と関係があります。ヨウ素の摂取量が多すぎても少なすぎても、甲状腺に異常をきたす原因となります。
  • 魚をネコの主食とすべきでない理由の1つは、魚のヨウ素含有量が高いので、甲状腺機能亢進症の危険が高まるためです(脚注3)。ネコに魚をできるだけ与えないように勧める獣医師も多いです。
  • 魚と強化卵の例として、フランケン生食で使われることが多いイワシと、スーパーにも置いてあるヨード卵を例とします。イワシは90.72gあたり36.00mcgのヨウ素を含むため(脚注4)、100gあたりではおよそ40mcgです。一方ヨード卵は100gあたり1300mcg(1.3mg)のヨウ素を含みます(脚注5)。ヨード卵のヨウ素含有量は、イワシの32倍以上です。
  • よってヨード卵はネコにとってヨウ素が高すぎるため、生食で普段使いする卵には向いていません。たまに与えるだけでも危険かは分かりませんが、ネコが甲状腺機能亢進症に遺伝的な傾向があるなら危険かもしれません(ただし甲状腺機能亢進症への遺伝的な傾向を調べる方法は、現時点ではないようです)。

その他強化卵

  • 上記の栄養強化卵以外にも、ビタミンD、ビタミンE、その他の栄養素を強化した卵が色々と販売されています。
  • ビタミンDは摂取しすぎるとビタミン過剰症を引き起こすおそれがあります。中毒となる量は、乾物含量で食物1ポンドあたりビタミンDが4545IUとされています(脚注6)。ただしこの量を一度与えただけで中毒を引き起こすことは考えにくく、中毒が起こるまでには恒常的に数ヶ月与え続ける必要があるとされています。
  • ビタミンDの含有量が中毒量に達しない食品でも、慢性的にビタミンDを摂取しすぎることで健康に悪影響が出るおそれがなくはありません。ビタミンDの高い強化卵を使うなら、ビタミンD含有量を確認しておいた方が安全です。
  • 一方ビタミンEは、かなり高い摂取量でもネコに中毒を起こすことはないとされています(脚注6)。なのでビタミンE強化卵は与えても問題なさそうです。

鶏卵以外の卵

卵の種類

  • 鶏卵以外の卵でも、スーパーなどの小売店や通販で入手できるものがあります。下は入手できる卵の例です。
    うずら卵
    あひる卵
    ガチョウ卵
    七面鳥卵
    烏骨鶏(うこっけい)卵
  • 上の表の中で、うちが与えたことがあるのはうずら卵のみです。うちのネコの反応は、初めて与えたときは鶏卵を与えたのと同じ反応で食べてくれました。鶏卵にとても慣れてから、しばらくぶりにうずら卵を与えたらあまり食べてくれませんでした・・・。

栄養について

  • フランケン生食の主食はあくまでお肉+骨+内臓です。ここで卵を食事に加えるのは、お肉・骨・内臓に不足しがちな栄養素の摂取のためです。
  • 鶏卵の黄身には、コリンやビタミンEといった栄養が詰まっています。また鶏卵の黄身では、ビタミンD、鉄、ヨウ素、DHAなどの栄養素も摂取できます。
  • 珍しい種類の卵は栄養成分データが見つけにくいのが欠点です。鶏卵以外の卵を使う場合、その卵にコリンやビタミンEといった栄養素が不足していると、食事の栄養バランスが崩れてしまいます。また特定の栄養素の含有量が多すぎて、定期的に与えるのは危険ということもありえます。
  • そのため鶏卵以外の卵はたまに与える程度にとどめ、与える前に栄養成分データを確認した方が安全です。

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