肉骨粉(ミートボーンミール)

キャットフードの原材料の肉骨粉(ミートボーンミール)について。

肉骨粉とは

  • 肉骨粉(ミートボーンミール、MBM)はレンダリングによって作られます。人間の食材として適さない動物や屑肉を大量に工場に集め、それらを高温で加熱することで茶色っぽい粉(肉骨粉)が製造されます。
  • FDA(アメリカ食品医薬品局)によると、肉骨粉の材料となるのはと殺場から来る臓物、食肉加工や飲食店の廃棄物、と殺以外で死んだ動物などです(脚注1)。と殺以外で死んだ動物とは、病気にかかり人間の食用に適さない家畜、道路で事故死した動物の死骸、安楽死処理された家畜やペットなどを含みます。
  • 肉骨粉は主に家畜の飼料や、ペットフードの安いタンパク源として使用されています。
  • 狂牛病の流行は、狂牛病に感染した牛からできた肉骨粉を家畜の牛に与えたことが原因です。狂牛病の発生以前には、肉骨粉は牛のエサとして数十年間使われてきました。狂牛病が初めにどこで発生したのかはいまだ判明しませんが、感染した牛を含む肉骨粉が流行の原因となりました。
  • 狂牛病の流行に対応するため、イギリスは反すう動物(牛や羊など)からできたタンパク質を別な反すう動物に与えることを禁止しました。現在イギリスやアメリカなどの国では、牛からできた飼料が別な牛に与えられることは基本的にありません(脚注2)。

肉骨粉に含まれる安楽死薬

  • ペントバルビタールナトリウムはペットを含む動物の安楽死に使われる薬品です。FDAの調査により、特定のペットフードにペントバルビタールナトリウムが含まれていたことが判明しています。
  • ペントバルビタールナトリウムで安楽死処分された家畜は危険なので、人間の食用にされることはありません。
  • ペットフードに含まれるペントバルビタールナトリウムは、肉骨粉や動物性脂肪など、レンダリングで製造された原材料に由来すると考えられています。ペントバルビタールナトリウムは熱に強いため、安楽死させられた動物がレンダリングされると肉骨粉にペントバルビタールナトリウムが残ってしまいます。
  • Ann N. Martin氏は著書FOOD PETS DIE FOR: Shocking Facts About Pet Foodの中で、ペントバルビタールナトリウムを含んでいたドッグフードのブランド一覧を掲載しています。この一覧はFDA/CVM(アメリカ食品医薬品局 動物用医薬品センター)から取得されたものです(脚注3)。日本で販売されている幾つかのブランドも一覧に含まれています。
  • 上記研究により検出されたペントバルビタールナトリウムは微量であり、イヌに急性の症状を起こすとは考えにくいと言われています。しかし微量のペントバルビタールナトリウムを長期間にわたりペットが摂取することは通常想定されていないため、何年もイヌが摂取し続けたときの慢性毒性については研究がありません。ネコについての研究はもちろんありません。

ネコ・イヌからできた肉骨粉

  • 肉骨粉を製造するレンダリング工場は様々な動物を処理していますが、行き場のないイヌ・ネコなどのペットの死骸を処理する工場もあります。レンダリング工場に運ばれるイヌ・ネコの有無や量は、地域や工場ごとにかなり異なるようです。
  • イヌ・ネコを含む死骸は工場に運ばれると、敷地内の屋外に積み上げられます。ここで首輪が外されることもあります。死骸は粉砕され、高温処理されて肉骨粉にされます。
  • 掲載動画は米国カリフォルニア州のレンダリング工場で、イヌやネコがレンダリングされるまでを紹介したものです。死骸やウジ虫などが映るので、苦手な方はご注意ください。

ペットフード原材料はイヌやネコを含む?

家畜飼料の方針

  • 肉骨粉は色々な動物から製造されています。そのためキャットフードに肉骨粉が使われていても、そのキャットフードがイヌやネコを原材料に含むとは限りません。しかし法的には違法でないので、イヌやネコから製造された肉骨粉を含むブランドもあるかもしれません。
  • 多くのペットフードが製造されるアメリカでは、FDAが決めた方針に従って家畜飼料が製造されます。家畜飼料にはペットフードも含まれています。
  • FDAは反すう動物以外の動物に、同じ動物からできた肉骨粉を与えることを禁じていません(狂牛病の関係で牛→牛は禁止されましたが、豚→豚はOKということです)。肉骨粉は家畜飼料として何十年も使用されてきました。ペットフードも家畜飼料の一種に分類されるので、特に例外というわけではありません。
  • 元AAFCO会長であるHersch Pendell氏も任期中に受けたインタビューで、ペットフードの原材料にペットが使われることについて「受け入れがたいかもしれないが、栄養面ではタンパク質であることに変わりはない」「原材料に肉骨粉と表示されているなら、ウシ・ヒツジ・ウマ・Fluffy(イヌやネコにつけられる名前)のどれからできているか分からない」と発言しています。インタビューは掲載動画で見られます。

レンダリングとDNA

  • キャットフードが肉骨粉や肉粉を原材料に含む場合、原材料にイヌやネコを含まない保障はありません。レンダリング中の高温でDNAは変性・破損してしまうため、ペットフードの原材料にイヌ・ネコが含まれるかをDNA鑑定で調べることはできません。
  • 高温でDNAが破壊されることで、レンダリング前の動物が持っていたウイルスなどが死滅するメリットがあります。一方で狂牛病の感染因子はプリオンです。プリオンはウイルスや微生物ではなくタンパク質の一種のため、レンダリングで破壊されずに狂牛病の流行を招きました。

肉骨粉の仕入先

  • 肉骨粉を含むキャットフードがイヌ・ネコを含むかどうか調べる唯一の手段は、ペットフードメーカーに肉骨粉の仕入先を聞くことです。仕入先の肉骨粉を製造するレンダリング工場を見学すれば、どんな動物がレンダリングされているのか確認できます。
  • 上記の方法で肉骨粉の材料を調べることは、現実的にはほぼ不可能です。ペットフードメーカーが肉骨粉の仕入先は知的資産情報ということで教えてくれなかったり、中間業者の情報しか分からないかもしれません。またレンダリング工場内は危険ということもあり、個人で訪れても見学させてくれないことが多いと思います。
  • レンダリング工場で扱われる廃棄動物の種類や量は日替りなので、一度の見学では本当にイヌ・ネコが処理されていないか調べることはできません(かといって毎日欠かさずに見学に行くのは無理です)。

屠殺場からの肉骨粉

  • レンダリング工場の中には、屠殺場の隣にある小さな工場もあります。このような工場では、屠殺場で出た人間の消費に適さない副産物を肉骨粉に加工します。ペットフード製造元がそのような肉骨粉や動物性脂肪を選択していれば、そのメーカーのフード原材料にネコやイヌが混じることはありません。
  • 屠殺場と連結したレンダリング工場が一種類の家畜しかレンダリングしていなかった場合、生産物は肉骨粉にならない点には注意です。例えば鶏の屠殺場で出た屑肉や副産物だけをレンダリングしている場合、生産物は「チキンミール」「鶏肉副産物ミール」になり、「肉骨粉」にはなりません。肉骨粉であると同時に原材料にペットを含まないためには、工場が複数種類の家畜をレンダリングし、かつペットはレンダリングしていないことが必要です。

求められる情報公開

  • 肉骨粉は様々な動物・副産物・屑肉などからできています。そのため現在の家畜飼料法では、ペットフードに使用される肉骨粉が何からできているか判別しようがありません。
  • ペットフード原材料の肉骨粉にイヌやネコが含まれていないと法的に保障されるためには、FDAがイヌ・ネコを含む肉骨粉のペットフードへの使用を禁じるか、肉骨粉の定義を変える必要があります。愛玩動物としてのペットの存在が当たり前になったことで、家畜とは異なるペットの扱いを求める消費者も増えています。
  • 肉骨粉の定義を変える場合、
    ①家畜のみをレンダリングして製造された肉骨粉
    ②イヌ・ネコを含む不特定の動物をレンダリングして製造された肉骨粉
    の2つに分類します。これら2種類の肉骨粉が原材料ラベルに異なる名前で表示してあれば、消費者がイヌ・ネコを含む肉骨粉を避けたい場合①を選択できます。
  • ウシは草食動物ですが、ネコは肉食動物です。そのためネコからできた肉骨粉をネコに与えることは、ウシからできた肉骨粉をウシに与えるよりもマシという意見もあります。肉骨粉はネコが必要なタンパク源になりますし、しかも原価が安いです。しかしペットを別なペットに食べさせるという考えは、倫理的に大きな問題があることも確かです。

肉骨粉の避け方

  • 肉骨粉の原材料は様々なので、各キャットフードの肉骨粉がどんな動物からできているのか、ペントバルビタールナトリウムを含むのかを個人で調べるのは現実的ではありません。そのため肉骨粉を含むペットフードを避けた方が早いです。
  • 肉骨粉を避けるには、キャットフードの原材料ラベルを見ればOKです。「肉骨粉」「ミートボーンミール」「肉粉」「ミートミール」など、レンダリングされた動物の種類が分からない原材料を含むキャットフードを避けます。
  • 他にも「動物性脂肪」など、動物の種類が分からない原材料を含むフードはできるだけ避けた方が安全です。動物性脂肪はレンダリングにより肉骨粉から分離された脂肪のことです。

脚注

  1. CPG Sec. 675.400 Rendered Animal Feed Ingredients
  2. Bovine Spongiform Encephalopathy (BSE) Questions and Answers
  3. Martin, AN 2008, FOOD PETS DIE FOR: Shocking Facts About Pet Food, 3rd edn, NewSage Press, Troutdale, OR (書籍)

スポンサードリンク

PR

PR